キャラクターストーリー 『桃の節句』
重寿:そっと、そーっと…。
桂華:重寿さん? そこで何――もがっ!
重寿:し、静かにぃ!
桂華:――! ――!
重寿:はぁ…見つかったら、どうするのさ…。
桂華:もしかして…いつものさぼりですか?
重寿:いつものとか、さぼりとか…人聞きが悪いなぁ。今日は雛祭りでしょ、ちょーっと白酒でも飲みに行こうかなって…。
桂華:いつもみたく“遊里”にって事ですよね?。
重寿:ぐっ…。
桂華:いいんですか? 先程から腰元達が探してますよ? 一様に飾り付けが進まないって――。
重寿:そうだ! 君も一緒に来る? ほら、柳屋なら君も顔が利くじゃない?
桂華:重寿さん!
重寿:あぁ! 俺、菊千代さんに呼ばれてたんだ! ごめん、もう行くね!!
桂華:全く…逃げ足は早いんだから…。
菊千代:良いところに!
桂華:えっ…菊千代さん?
菊千代:なに? 不思議そうな顔しちゃって。
桂華:たった今、重寿さんが菊千代さんに呼ばれてるからって…。
菊千代:あたしの名前を勝手に使うなんて…。後でどうしてくれようかしら…。
桂華:あ、あの! 何か用事があったのではないのですか?
菊千代:そうそう、そうなのよ! ちょっと手伝って欲しいのよ。
桂華:お手伝いですか?
菊千代:うん、良い感じに飾り付けられたわね!
桂華:あの…どうして宗泰様が雛人形をお持ちに?
宗泰:これは亡き母の物でね。折角の人形も陽の光に当ててやらねば、母が悲しむだろうと思ってね。
桂華:そういう事でしたか。
宗泰:だが、こうして見ると女雛は実に愛らしい顔をしているな。
菊千代:本当に。うふっ、桂華ちゃんみたい。
桂華:私ですか?
菊千代:それなら男雛は、あた――。
宗泰:私だな。
菊千代:……。
宗泰:そう思うだろう、菊千代。
菊千代:えっ…。
宗泰:な、菊千代。
菊千代:……はい、仰るとおりです。
桂華:……。
宗泰:では、そろそろ用意を。
菊千代:そうですね。では、すぐに持ってこさせます。
桂華:用意…ですか?
宗泰:あぁ、雛祭りと言えば、白酒に潮汁に菱餅だろう。お前の分もあるから、食べていくといい。
桂華:宜しいのですか?
宗泰:当然だろう。お前が喜ぶと思って、用意したのだからな。だが、慎弥には秘密にして欲しい。除け者にされたと拗ねられては敵わんからな。
桂華:くすっ、わかりました。
菊千代:さぁどんどん持ってきてちょうだい! 女子のお祭り…あたしと桂華ちゃんのためのお祭りを始めるわよ!
桂華・宗泰:えっ…?
ページの先頭へ